復活企業特集|日立製作所・6501
日立の復活を検証
約7,800億円の赤字から最高益へ
大手電機のなかでもいち早く事業ポートフォリオの変革を進め、最高益へとつなげた日立。その歩みを業績と事業構成から検証します。
20年前・15年前・10年前と直近5期の業績・事業構成・人員・年収を比較
調査基準日:2026年10月15日/通期決算:2026年3月期まで/時価総額の参考値:2026年9月30日株価基準
比較時点:2006年3月期、2011年3月期、2016年3月期、2022~2026年3月期。年度表記と決算期の1年のずれに注意し、本文はすべて「○年3月期」に統一しています。
日立の復活を数字で見る
復活企業の分析|最高・最低・現在
売上・利益・人員はいずれも、比較期間内の底を上回っています。ただし、売上は2008年3月期の最大規模にまだ戻っていません。日立の変化は、かつての事業をそのまま拡大したものではなく、事業の入れ替えを伴う収益力の改善です。
売上高・売上収益
最高2008年3月期11兆2,267.4億円
最低2021年3月期8兆7,292.0億円
現在〈直近通期〉2026年3月期10兆5,867.8億円
当期利益〈親会社株主帰属〉
最高2026年3月期8,023.7億円
最低2009年3月期△7,873.4億円
現在〈直近通期〉2026年3月期8,023.7億円
連結従業員数
最多2022年3月末368,247人
最少2024年3月末268,655人
現在〈直近年度末〉2026年3月末287,901人
最高・最低・最多・最少の比較範囲は、2006~2026年3月期の通期・年度末公表値です。創業以来の記録ではありません。米国基準とIFRS、連結範囲の異なる数値を含むため、同じ事業群の成長率ではありません。従業員数の増減には、買収や売却・非連結化も含まれます。出典:2010年3月期有報/2016年・10カ年データ/2021年3月期有報/2026年・10か年データ。
時価総額|高値時・安値時・2026年9月末
株価高値時の参考時価総額2026年2月10日約27.67兆円
株価安値時の参考時価総額2009年12月1日約7,646億円
2026年9月末の参考時価総額2026年9月30日約24.90兆円
時価総額は当サイト算出。2026年2月10日は株価6,039円×発行済株式数4,581,560,985株、2009年12月1日は株価227円×3,368,126,056株、2026年9月30日は株価5,489円×4,535,560,985株で計算しています。自己株式を含みます。
株式数は日立の公式開示に基づき、高値時は2025年6月3日の増加後・2026年3月31日の消却前の株式数、安値時は2009年11月16日公表資料記載の株式数、9月末は2026年6月末の株式数を使用しています。安値時と9月末は当日の株式数を確認した確定値ではなく、基準日の異なる株式数による参考概算です。株価の高値・安値と時価総額の最高・最低は一致するとは限らないため、過去20年の時価総額最高・最低を示すものではありません。
1. 売上・利益・人員・年収:20年前からの節目と直近5期
| 決算期 | 会計基準 | 売上高・収益 億円 |
営業利益等※ 億円 |
当期利益 億円 |
営業利益率等※ | 連結従業員 人 |
単体平均年収 万円 |
出典 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2006年3月期 | 米国基準 | 94,648.0 | 2,560.1 | 373.2 | 2.7% | 327,324 | — | 報告書 |
| 2011年3月期 | 米国基準 | 93,158.1 | 4,445.1 | 2,388.7 | 4.8% | 361,745 | 757.0 | 報告書 |
| 2016年3月期 | IFRS | 100,343.1 | 6,348.7 | 1,721.5 | 6.3% | 335,244 | 868.6 | 報告書 |
| 2022年3月期 | IFRS | 102,646.0 | 7,382.4 | 5,834.7 | 7.2% | 368,247 | 897.0 | 報告書 |
| 2023年3月期 | IFRS | 108,811.5 | 7,481.4 | 6,491.2 | 6.9% | 322,525 | 916.0 | 報告書 |
| 2024年3月期 | IFRS | 97,287.2 | 7,558.2 | 5,899.0 | 7.8% | 268,655 | 936.0 | 報告書 |
| 2025年3月期 | IFRS | 97,833.7 | 9,716.1 | 6,157.2 | 9.9% | 282,743 | 961.4 | 報告書 |
| 2026年3月期 | IFRS | 105,867.8 | 11,992.8 | 8,023.7 | 11.3% | 287,901 | 995.0 | 報告書 |
※2006・2011年3月期は会社公表の営業利益、2016年3月期以降は調整後営業利益(売上収益-売上原価-販管費)。IFRSの税引前利益やAdjusted EBITAとは異なります。当期利益は親会社株主帰属。年収は提出会社単体の平均年間給与で、賞与・基準外賃金を含み、連結全従業員の平均ではありません。2006年3月期の年収は原本未確認のため「—」とし、ゼロや推計値で補っていません。金額は億円・万円に換算し、小数第1位に丸めています。
2006年3月期と2026年3月期を比べると、売上規模の拡大以上に利益率の改善が目立ちます。営業利益等の売上比率は約2.7%から約11.3%へ上昇しました。一方、人員は約32.7万人から約28.8万人へ減っています。事業売却で売上・人員が減った影響と、残した事業の収益力が高まった影響を合わせて読む必要があります。
2. 事業ポートフォリオ:何を残し、何を入れ替えたか
売上構成をドーナツグラフで比較
各時点の公式セグメントで、その時代の日立の構成を示します。円は内部取引を含む各部門の売上合計を100%として計算し、中央には内部取引を消去した連結売上を表示しています。区分変更や買収・売却があるため、色や部門名だけで同一事業の連続的な増減とは判断できません。
幅広い総合電機
円の分母:部門売上合計 110,092億円
内部取引を含む・全社消去前
- 情報通信システム21.4%
- 電子デバイス10.9%
- 電力・産業システム25.5%
- デジタルメディア・民生機器11.9%
- 高機能材料14.5%
- 物流・サービス他11.0%
- 金融サービス4.7%
ITから家電、素材、金融までを抱える構成。情報通信にはHDDも含まれ、現在のデジタル事業とは範囲が異なります。
出典:2006年3月期報告書
11部門を抱える再建期
円の分母:部門売上合計 105,009億円
内部取引を含む・全社消去前
- 情報・通信システム15.7%
- 電力システム7.7%
- 社会・産業システム11.0%
- 電子装置・システム10.3%
- 建設機械7.2%
- 高機能材料13.4%
- オートモティブシステム7.0%
- コンポーネント・デバイス7.7%
- デジタルメディア・民生機器9.1%
- 金融サービス3.6%
- その他7.3%
HDD等のコンポーネント、材料、自動車機器も大きな事業。低収益事業の再建・撤退とコスト改革を進める時期です。
出典:2011年3月期報告書
社会インフラを強化
円の分母:部門売上合計 111,928億円
内部取引を含む・全社消去前
- 情報・通信システム18.8%
- 社会・産業システム20.8%
- 電子装置・システム10.1%
- 建設機械6.8%
- 高機能材料14.0%
- オートモティブシステム8.9%
- 生活・エコシステム6.1%
- その他(物流・サービス他)11.2%
- 金融サービス3.3%
情報通信と社会・産業が大きな柱。鉄道の海外展開やデジタル基盤の整備を進める一方、素材・物流・金融も残っています。
出典:2016年3月期報告書
大型買収と入れ替えの途上
円の分母:部門売上合計 109,792億円
内部取引を含む・全社消去前
- IT19.6%
- エネルギー13.2%
- インダストリー8.2%
- モビリティ13.0%
- ライフ9.4%
- オートモティブシステム14.6%
- 日立建機9.3%
- 日立金属8.6%
- その他4.2%
ABBのパワーグリッド事業とGlobalLogicを取り込んだ後。日立建機・日立金属・Astemoはこの時点では連結対象です。
出典:2022年3月期報告書
デジタル×社会インフラ
円の分母:部門売上合計 112,755億円
内部取引を含む・全社消去前
- デジタルシステム&サービス26.1%
- エナジー28.6%
- モビリティ11.7%
- コネクティブインダストリーズ28.9%
- その他4.7%
デジタル、送配電等、鉄道、産業・ビル・計測等の4主力事業へ。素材・建機・自動車の売却・非連結化も構成を変えました。
出典:2026年3月期報告書
直近の2026年3月期では、外部顧客向け売上収益はデジタルシステム&サービス2兆7,565.5億円、エナジー3兆2,008.4億円、モビリティ1兆3,206.3億円、コネクティブインダストリーズ3兆7.6億円です。デジタルだけへの転換ではなく、送配電、鉄道、産業設備などの事業基盤とデジタルを組み合わせる構成が特徴です。
出典:2026年3月期決算短信・セグメント情報(本文9~10頁)。ドーナツの凡例は内部取引込みのため、この外部売上の数値とは異なります。
3. 「復活」をどう読むか
時代に合わせて事業ポートフォリオを変え、そのために撤退・売却・買収と経営体制の改革を続けたことが、日立の復活を見る上での中心です。2009年3月期の大幅赤字から、直近の利益水準に至るまでには約17年を要しています。短期間で元の総合電機の姿に戻ったわけではありません。
- 再建と選択:2010~2012年度の中期計画では、低収益事業の見直しや薄型テレビの自社生産からの撤退、HDD事業の売却、購買・生産拠点の改革などを進めました。
- 成長の基盤を作り替える:鉄道の海外展開、Lumadaの立ち上げに加え、2020年のABBパワーグリッド事業の買収、2021年のGlobalLogic買収などで、送配電・デジタル分野の基盤を拡大しました。
- グループの境界を変える:日立化成、日立金属、日立建機、日立Astemoなどの資本政策を見直し、売却・持分比率変更を実施しました。連結売上や連結人員の減少も、この構造変化と切り離せません。
したがって、復活を売上規模だけで測ると変化を見落とします。2026年3月期の売上は2008年3月期のピークを下回りますが、利益率と当期利益は改善しています。事業の選択と組み合わせを長く続けた結果として、現在の収益構造を捉えるのが適切です。
出典:統合報告書2026・過去中期経営計画の振り返り(40頁)/2011年3月期有報・業績推移/2026年3月期有報。戦略の評価・解釈は当サイトによるものです。
タグから探す
タグを押すと、該当する企業や決算公告の一覧を表示します。色の付いたタグは、この決算公告に該当する項目です。

