J1運営企業の決算を比較|純利益・純資産と観客動員・人件費から読む経営の違い

企業の決算を、読み解く。決算情報サーチ

J1クラブの人気と、運営会社の利益はどのようにつながっているのでしょうか。2026年のJ1所属20クラブを対象に、確認できた個別決算公告16社の財務と、Jリーグ公式の収益・人件費・入場者数を比較しました。

ご利用にあたっての注意

本記事は、当サイトが独自に収集した公開資料をもとに集計・分析したものです。内容の正確性・完全性は保証いたしかねます。最新情報や詳細は、リンク先の原資料・各社の公式情報をご確認ください。

観客数が多いクラブでも赤字になる一方、スポンサー収入が大きな役割を果たすクラブもあります。単年度の利益、純資産の厚み、収益構成、チームへの投資を分けて見ると、運営企業ごとの違いが見えてきます。

比較の対象と読み方

対象は2026年のJ1所属クラブです。2025年にJ2だった水戸・千葉・長崎も含みます。本記事は「2025年のJ1全20クラブ」の比較ではありません。資料確認日は2026年10月2日です。

表1は官報・企業公式の個別公告原本による運営法人単体の数値です。FC東京・広島・川崎は、短期決算の直前にある2026年1月期の12か月決算を採用しました。他のクラブは確認済み公告を用いるため決算日が異なります。鹿島は5か月決算、千葉・町田の公告は対象期間の開始日が未記載です。貸借対照表は決算日時点の残高であり、純利益は一期間の成果なので、期間が違う利益額を単純な順位にはしません。

表2はJリーグの2025年度開示に掲載された収益構成を補足する表です。個別公告とは資料・決算期・丸め方が異なる場合があります。岡山の同開示は2025年2〜6月の5か月分なので、2025年通年の観客数と売上を直接対応させず、人件費率のグラフからも除外しました。入場料収入はカップ戦等を含み得る一方、観客数はリーグ戦のホーム19試合のみです。

金額は億円、比率は小数第1位に丸めています。「—」は未記載でゼロではありません。「純資産/総資産」は本サイトの参考計算で、厳密な自己資本比率と常に一致するとは限りません。流動比率は流動資産÷流動負債×100です。

個別公告から見る、利益と財務の厚み

表は横にスクロールできます。

表1 個別決算公告16社の財務比較(金額:億円)
クラブ・公告 決算日 総資産 純資産 純資産/総資産 流動比率 純利益・損失
鹿島 2026-06-30 ※5か月 60.08 17.13 28.5% 92.1% 2.94
浦和 2026-01-31 38.36 18.21 47.5% 67.2% -1.00
千葉 2026-06-30 29.22 9.10 31.2% 136.1% 4.23
柏 2026-03-31 27.38 10.01 36.6% 40.4% 3.33
FC東京 2026-01-31 34.26 23.65 69.0% 264.3% 0.83
東京ヴェルディ 2026-01-31 12.12 0.96 7.9% 98.7% 0.45
町田 2026-06-30 32.84 11.93 36.3% 122.7% 0.01
川崎 2026-01-31 57.68 24.33 42.2% 53.4% —
横浜F・マリノス 2026-01-31 34.07 0.98 2.9% 68.1% 0.03
清水 2026-01-31 13.87 2.22 16.0% 44.9% 0.34
名古屋 2026-01-31 24.44 1.20 4.9% 54.5% -6.74
京都 2025-12-31 18.29 9.89 54.1% 176.9% 2.05
セレッソ大阪 2026-01-31 18.91 7.85 41.5% 169.7% 0.30
神戸 2025-12-31 31.14 6.80 21.8% 65.8% -7.34
岡山 2026-06-30 33.69 7.30 21.7% 100.3% —
広島 2026-01-31 52.88 22.20 42.0% 131.1% 4.13

出典:各クラブ名のリンク先に掲載した官報・公式電子公告の原本。川崎・岡山の公告は貸借対照表のみのため、純利益は空欄です。FC東京・広島・川崎は12か月決算を掲載。鹿島の5か月決算および6月末公告と、他の期の純利益は同一期間の順位ではありません。

図1 2025年12月〜2026年3月決算の公告掲載純利益・損失(億円)

赤は損失、青は利益。6月末公告と純利益未記載の川崎・岡山は除外。公告に開始日がない会社について12か月と断定せず、決算日別の参考比較としています。

-8.00
0
5.00
広島
4.13
柏
3.33
京都
2.05
FC東京
0.83
東京ヴェルディ
0.45
清水
0.34
セレッソ大阪
0.30
横浜F・マリノス
0.03
浦和
-1.00
名古屋
-6.74
神戸
-7.34

出典:各社の個別公告原本。棒の長さは全行で同じ目盛りです。

観客の多さだけでは、黒字は決まらない

浦和の公告は1億円の純損失、名古屋は6.74億円の純損失です。一方、2025年の平均入場者数は浦和37,350人、名古屋32,263人と対象20クラブの中で上位でした。集客は収入の土台になりますが、試合開催費、チームへの投資、販売管理費なども差し引かれます。観客数の多さと、最終利益の大きさを同じ評価に置くことはできません。

広島の12か月決算は純利益4.13億円、柏の公告は3.33億円の純利益です。ただし、川崎は個別公告に純利益の記載がなく、鹿島などは短期決算のため、ここからJ1全体の純利益順位を作ることは避けています。

図2 個別公告の純資産/総資産(%)

各社の決算日時点の残高を比較。決算日が異なり、現預金の割合や資金調達枠を示す指標ではありません。

0.0%
100.0%
FC東京
69.0%
京都
54.1%
浦和
47.5%
川崎
42.2%
広島
42.0%
セレッソ大阪
41.5%
柏
36.6%
町田
36.3%
千葉
31.2%
鹿島
28.5%
神戸
21.8%
岡山
21.7%
清水
16.0%
東京ヴェルディ
7.9%
名古屋
4.9%
横浜F・マリノス
2.9%

出典:各社の個別公告原本。棒の長さは全行で同じ目盛りです。

黒字と、損失に耐える資本の厚みは別の軸

FC東京の12か月決算では純資産23.65億円、総資産に対する割合は約69.0%。京都は約54.1%です。一方、横浜F・マリノスは約2.9%、名古屋は約4.9%、東京ヴェルディは約7.9%となります。横浜F・マリノスと東京ヴェルディは公告上の当期純利益がプラスですが、純資産の厚みは別途確認したい点です。

表1の16社はいずれも純資産がプラスで、決算日時点の債務超過には該当しません。ただし、純資産は現金残高ではありません。流動比率が100%未満の会社についても、前受金等の負債内訳、グループとの取引、実際のキャッシュフローが公告だけで分かるわけではなく、数値だけで支払能力を断定できません。

収益構成と人件費を、観客動員に重ねる

表は横にスクロールできます。

表2 Jリーグ公式・2025年度開示と2025年の入場者数
クラブ 財務の決算期 2025年所属 平均入場者数(人) 売上高(億円) スポンサー(億円) 入場料(億円) トップチーム人件費(億円) 人件費/売上高
鹿島 2026年1月期 J1 27,401 81.73 33.24 14.58 30.14 36.9%
水戸 2026年1月期 J2 6,006 16.42 7.93 1.70 5.06 30.8%
浦和 2026年1月期 J1 37,350 113.10 41.95 22.14 32.72 28.9%
千葉 2026年1月期 J2 15,549 39.27 20.81 7.01 12.57 32.0%
柏 2026年3月期 J1 13,017 47.11 29.25 7.54 22.36 47.5%
FC東京 2026年1月期 J1 31,590 72.10 32.23 14.39 24.97 34.6%
東京ヴェルディ 2026年1月期 J1 21,121 45.10 13.31 7.84 12.79 28.4%
町田 2026年1月期 J1 14,018 69.14 45.81 5.71 32.42 46.9%
川崎 2026年1月期 J1 22,050 100.69 37.65 14.69 28.68 28.5%
横浜F・マリノス 2026年1月期 J1 26,578 77.51 28.71 15.30 27.30 35.2%
清水 2026年1月期 J1 18,803 53.53 26.72 11.28 18.78 35.1%
名古屋 2026年1月期 J1 32,263 64.63 29.88 13.60 24.34 37.7%
京都 2025年12月期 J1 16,538 44.35 23.71 8.91 17.26 38.9%
ガンバ大阪 2026年1月期 J1 30,007 88.17 22.92 14.51 29.70 33.7%
セレッソ大阪 2026年1月期 J1 18,654 57.20 27.58 11.64 23.44 41.0%
神戸 2025年12月期 J1 21,099 87.11 30.25 14.41 31.86 36.6%
岡山 2025年6月期・5か月 J1 14,587 19.08 8.81 3.50 5.16 27.0%
広島 2026年1月期 J1 25,585 83.48 27.92 21.66 29.83 35.7%
福岡 2026年1月期 J1 10,031 37.40 15.43 6.47 15.33 41.0%
長崎 2025年12月期 J2 15,877 33.31 14.55 11.14 23.51 70.6%

出典:Jリーグ「2025年度クラブ決算一覧」。表2の金額は百万円表記を億円に換算。入場者数は2025年J1公式記録と2025年J2公式記録。比率は本サイト計算。

トップチーム人件費は公式資料の区分をそのまま使用しています。選手の平均年俸ではなく、移籍関連費用や運営経費も別区分です。人件費を登録人数で割って平均年俸を推計することはしていません。※岡山の財務・人件費は5か月分、平均入場者数は2025年通年です。

図3 2025年リーグ戦・ホーム1試合平均入場者数(人)

水戸・千葉・長崎は2025年J2、他はJ1。カップ戦やプレーオフを含まない延べ入場者数です。会場収容人数や国立開催等の違いもあるため、満員率の比較ではありません。

0
40,000
浦和
37,350
名古屋
32,263
FC東京
31,590
ガンバ大阪
30,007
鹿島
27,401
横浜F・マリノス
26,578
広島
25,585
川崎
22,050
東京ヴェルディ
21,121
神戸
21,099
清水
18,803
セレッソ大阪
18,654
京都
16,538
長崎
15,877
千葉
15,549
岡山
14,587
町田
14,018
柏
13,017
福岡
10,031
水戸
6,006

出典:J1・J2の公式記録。棒の長さは全行で同じ目盛りです。

入場料だけでなく、スポンサー収入も見る

浦和・川崎は公式開示の売上高が100億円を超えます。柏・町田はスポンサー収入の売上高に占める割合が約62%・66%で、集客規模だけでは運営企業の収益を説明できません。どの収益源が主力か、その構成が翌期も続くかを確認する視点が必要です。

観客数と売上高の関係は、スポンサー、物販、配分金、移籍補償金等にも左右されます。入場料収入をリーグ戦の観客数で割って「平均チケット単価」と呼ぶと、カップ戦等の収入との範囲の違いを見落とします。本記事ではその計算を行いません。

図4 トップチーム人件費/売上高(%)

同じ資料の人件費と売上高から計算。岡山の5か月決算は除外。水戸・千葉・長崎は2025年J2の事業年度です。低い比率が常に優れているという意味ではありません。

0.0%
80.0%
長崎
70.6%
柏
47.5%
町田
46.9%
福岡
41.0%
セレッソ大阪
41.0%
京都
38.9%
名古屋
37.7%
鹿島
36.9%
神戸
36.6%
広島
35.7%
横浜F・マリノス
35.2%
清水
35.1%
FC東京
34.6%
ガンバ大阪
33.7%
千葉
32.0%
水戸
30.8%
浦和
28.9%
川崎
28.5%
東京ヴェルディ
28.4%

出典:Jリーグ2025年度クラブ決算一覧。棒の長さは全行で同じ目盛りです。

人件費率は、投資と収入のバランスを見る入口

長崎は人件費率が約70.6%で、公式開示では営業損失18.21億円に対して最終利益は0.07億円です。営業損益と最終損益が離れる場合には、特別損益等も確認する必要があります。人件費率は費用全体の一部であり、赤字の原因を人件費だけに帰すことはできません。

大きな人件費は競争力への投資とも考えられます。一方で、収入が減った際の負担にもなります。比率の高低だけで経営や補強の良し悪しを評価せず、売上の継続性、その他の費用、純資産の余力と合わせて読むのが適切です。

短期決算は、通期と分けて読む

表は横にスクロールできます。

表3 通期の後に公表された短期決算(金額:億円)
クラブ・公告 期間 売上高・営業収益 営業利益・損失 純利益・損失 期末純資産
FC東京 2026年2〜6月・5か月 33.31 0.53 0.58 24.23
広島 2026年2〜6月・5か月 37.02 4.34 3.67 25.86
川崎 2026年2〜3月・2か月 — — — 23.35

表3の出典:各リンク先の個別決算公告原本。川崎の短期決算原本も貸借対照表のみです。公式のクラブ経営情報にある損益数値を、公告に記載された数値として補完してはいません。

FC東京の第29期と広島の第35期は5か月、川崎の第31期は2か月です。FC東京・広島の純利益を12か月決算と比べて「増益・減益」と表現したり、5か月の売上を単純に12倍÷5で年換算したりすると、試合日程や費用計上の季節性を無視することになります。表1の12か月決算と、表3の短期決算は別の資料として読んでください。

千葉・町田の2026年6月末公告と、表2の2026年1月期開示も対象期が異なります。岡山は表2が2025年6月の5か月決算、表1が2026年6月末の貸借対照表です。二つの表の数値が違う場合、まず決算日と出典の違いを確認する必要があります。

個別公告・出典

当サイトの個別公告では、原本画像と運営法人を確認できます。公告原本を確保できた16社は以下です。水戸・ガンバ大阪・福岡・長崎は今回の個別公告原本が未確認のため、表1には含めず、公式のクラブ経営情報によるKPIのみを掲載しています。

Jリーグ公式「2025年度クラブ決算一覧」 / 2025年J1クラブ別入場者数 / 2025年J2クラブ別入場者数。表・図の比率は決算情報サーチが計算しています。資料の丸めによる差や、法人ごとの事業範囲の違いに留意してください。

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